森田療法について

1919年に森田正馬(まさたけ)によって創始された東洋的な精神療法です。西洋の精神療法は治療者の心を用いて悩める人の苦しみを取り除こうとする試みですが、森田療法では外なる自然に目を向けることで自己の内なる自然に気づき、本来の自己を取り戻すことを目指します。 第一期から第四期までの入院森田療法と、外来で行う日記指導を中心とした外来森田療法があります。

森田療法とは

100年ほど前に精神科医である森田正馬(1874~1938)によって設立された東洋的な精神療法です。
欧米の精神療法が『これまでの考え方』を取り上げ、ネガティブなものをポジティブなものに変えていこうとするのがその中心的な内容といえます。
それに対して森田療法はまったく逆で、『様々な心配事が頭に浮かんでも余計な計らいをせずにそのままにしておく』という基本的な治療態度です。
『考える』ということにとらわれないと言い換えることもできます。考えをそのままにして、その人本来の生き方を引き出していくための方法として、およそ7日間の『臥褥』や、その後の『作業療法』が行われます。
鎌倉では小さいけれども気づくと実に豊かな『周囲自然』に働きかけることで、すなわち周囲の植物や動物を観察したり、手を出したりすることでそれらの生き方から学ぶことで、自分のこれまでの『とらわれ』、すなわち『外観重視の考え方』に気づいたり、さらに『自分に見合った生き方=いまの自分のままでいい』ということに気づくのです。
これまで内観・森田療法を受けた患者様Aさんの日記からですが、以下のように述べています。
「植物とは言葉で話ができないけれど、花や葉の付き具合で、まるで会話をしているような気分です。時間が早く過ぎてとても楽しい」「いま感じている恐怖や悲しみがあることで、また平和を願う心が、より強く生まれるのであれば、この心の揺れはそのままにしておいてもいい。こどものころの体験があったからこそ、きっとそれが次の活動への原動力になるかもしれない」

入院森田療法の対象について

その人が置かれている様々な学校や職場および家庭環境において、「こうでなければならない」という観念にとらわれ、結果として思うような行動がとれなくなり、不安や葛藤を抱き、うつ状態に陥る神経症の心理機制をお持ちの方が主に対象となります。状態像としては不登校や引きこもり、スマホゲームへの依存、摂食障害などがあります。

内観・森田療法について

おそらく全国でも初めてといえる、わが国の土壌からできあがった内観と森田療法を結びつけた、いわゆる『内観・森田療法』という古くて新しい精神療法(心理療法)を開発しました。
これまで以下のような方たちがこの療法を体験し、その効果を確認できています。
 
○死にたい気持ちを変えたい
○生きる意味がわからない
○強迫症状を変えたい
○学校に行きたくない
○トラウマを処理したい
 
ストレスの多い現代社会で、自分自身を取り戻す有効な方法と考えています。
多くの方が利用されることを願っています。

内観とはなにか?

まず患者さまから最初に聞かれるのがこの質問です。文字通り「こころの<内側>を<観る>というこころの作業」といえます。
わたしたち特に現代人は「外観」、すなわち<みてくれ>や<外見>ばかりを気にして生きているのではないでしょうか?お金で自分の価値を評価しようとしたり、美人かどうかを争い整形手術を繰り返したり、学校の成績だけで自分や他人を評価しようとしたりしていませんか?さらにわたしたちはいつしか「こうでなければならない」という固定観念にとらわれています。
例えば「背が高くなければならない」、「点数が高くなければならない」、「皆から好かれなければならない」など自己評価をいつしか固定化してとらえてしまっているのです。これも「外観」にあてはまるでしょう。
さらに神経症といわれるひとたちは「不安はあってはならない」とか「完璧でなければならない」、「汚れがあってはならない」などいつしかこれも「外観」に当てはまるような固定化した自己評価をしており、実際にはそのようにはいかない自己のありかたに悩んでしまうのです。
このような「外観」的な自己評価が満たされないことから自分自身の生きがいを失い、死にたい気持ちになったり、あるいはなんともいえない怒りや寂しさや孤独感に陥ったり、わけもなく悲しくなったりといわゆる「感情の揺れ動き」を体験します。
このような「外観」的な自己評価には、本人のパーソナリテイ(例えば内向的あるいは外向的な)、家族関係や学校や職場の状況、さらにその人が暮らす地域の人間関係や社会通念などが関与していると思われます。
それでは「内観」ですが、もともとは吉本伊信(1916~1988)という浄土真宗のお坊さんで実業家であった人が「身調べ」という浄土真宗の修行法をもとに1940年代に開発した一般のひとにも通用するように工夫した自己観察法をいいます。これまでの「外観」的な考え方や生き方をしてきたわたしたちが、ちょっと視点を変えて「こころの内側を観る」ことでこれまでの悩みに対処していこうとするものです。
わたしどもも2019/2020年の12月末に吉本伊信のあとを引き継がれた真栄城輝明先生が行う奈良県郡山市の「内観研修所」を訪れ、7日間の集中内観を行いました。7日間、家族や友人、職場の医師のわたしにもこれまでの私生活のみならず診療で出あった多くの患者さまについて「~してもらったこと」、「~して返したこと」そして「迷惑をかけたこと」の3項目について「身調べ」し、様々な反省と感謝の気持ちを体験できました。そしてわたしは医師として、この鎌倉の地で「内観・森田療法」という他のどこでも行われていない古くて新しい精神療法を行うことが患者様のこれまでの多くの悩みや苦しみを救う契機になるのではないかと考えています。

内観療法とは

自己の内面を観察する方法です。3日コースと7日コースがあります。
遮蔽された空間に身を置き、自分の身近な人々(両親、きょうだい、配偶者、子ども、友人など)を対象として、幼少期から現在に至るまで、以下の3つについて振り返り(身調べ)ます。
 
1. お世話になったこと
2. して返したこと
3. ご迷惑をかけたこと
 
2時間ごとに3~5分の面接があり、内観した内容を簡潔に報告します。自分の自己中心性自覚され、素直な気持ちが起こり、周囲の人々からの愛情に感謝の気持ちが生じてきます。

入院内観療法の対象について

家庭内や学校・職場の人間関係(夫婦や嫁姑、親子関係やきょうだい関係など)に悩む方
 
人生で不幸な出来事(犯罪や虐待、災害や事故、家庭や友人の喪失、失職など)に遭遇した方
 
依存症(スマホやゲーム、食行動異常など)に悩む方

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