医療法人 福慈会 
メンタルホスピタルかまくら山

〒248-0031 鎌倉市鎌倉山1-23-1
TEL:0467-32-2550 FAX:0467-32-2639

ご挨拶

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Concept

概念

あるがままに
人生の再構築を

深い緑と鳥たちの声、 そしてすがすがしい風 ──
「メンタルホスピタルかまくら山」には、そんな穏やかな時間がゆっくりと 流れています。
私たちは、患者さまの心の傷を 性急に治すことはいたしません。
少し時間はかかりますが、 患者さまがご自分を受け入れ、肯定し、そして本来のご自分を取り戻す お手伝いをしています。
いわば患者さまの“人生の再構築”こそ、私たちが掲げる医療の目標です。

 

Greeting

ご挨拶

 
 

医療で「個の尊厳」の具現化を支援
院長 鈴木 雄壱

 
「眠れないし疲れる。配慮ばかりが空回りする」、「不安に駆られ、いても立ってもいられない」、「周囲に見透かされている。たくまれているようだ」――。
 
どうもおかしいと気づきつつも、「残業続きだから」、「単なる性格の問題だろう」、あるいは、それこそ「気のせいだ」と逡巡し、窮してしまってはいないでしょうか。また、長らく精神に不調を抱えて“出口”が見通せず、ご家族ともども、後ろ盾のない心もとなさを抱えていらっしゃいませんか。
 
「精神科リハビリテーション」という分野では、「長らく精神疾患を抱えた当事者が、自ら望んだ環境で、落ち着き、満足できるように(successful and satisfied in the environments of their choice)支援することを使命とする」(W. Anthony et al; Psychiatric Rehabilitation 2nd, 2002)と謳われています。言い換えれば、「個の尊厳」つまりは「基本的人権」の具現化を支援する、ということです。
 
「個の尊厳」が侵害されれば、最終的には裁判所が擁護してくれましょう。一方、精神に不調を抱えることを余儀なくされ、「個の尊厳」をその人らしく具体的に花開かせるのに難渋し、支援を求めずにいられなくなった時こそ、われわれ医療・福祉・介護担当者の出番です。
 
三十余年前、全国紙の新聞記者として、時事の追跡に日夜奔走を強いられていました。「出し抜き」競争に向かない自身の愚鈍さ加減に、いよいよ直面せざるを得なくなりました。
 
「何をやっても間に合はない そのありふれた仲間のひとり」
 
宮沢賢治の詩の一節に自身を重ね合わせたりして、「生きることと死ぬことのあり方」への探求に駆られていきました。「安心して自身のままでいられる場」を手探りした先に、精神科医としての今に行き着きました。
 
精神に不調を抱えた方々に寄り添うほどに、自らのあきれるほどの至らぬ行状が照らし出されます。日々、反省しきりです。それでも、当事者や地域の方々、医療スタッフの皆でできあがる“共同体”につながっていられる喜びは、ひとしおです。
 
至らぬ行状へのあがないと、当事者の苦悩に寄り添わせてもらっている恩への謝意を込めて、“精神科リハビリテーションの使命”の実現はもとより、確かな診断と治療、看護、介護に向けて、しのぎを削る所存です。地域に深く根ざし、時勢に遅れず、常識に縛られることなく研鑽を重ね、単科の精神科病院としてできることを、地道に取り組んでいきたいと存じます。そのためには、地域の皆様との意見交換が必須です。ぜひ、お力をお貸し下さい。
 
 

連携型認知症疾患医療センター始動
「おなじみの関係」で「個の尊厳」を復権

 
当院は令和44月、神奈川県から、連携型認知症疾患医療センターを委嘱されました。「連携型認知症疾患医療センター かまくら山」と命名させていただきました。
 
認知症の医療相談や、認知症と診断された方やそのご家族様への支援、既に地域で活動されている医療・福祉・介護の各種団体との連携、認知症による心理・行動面の症状への対応と、様々な役割を担わせていただくことになりました。単科の精神科病院であるという当院の特性から、認知症による激しい心理・行動の症状への入院加療には、殊に注力して参りたいと存じます。
 
「物忘れ」に始まり「段取りが以前のように行かなくなった」と逡巡するうちに、徘徊による迷子や真夜中の大声、暴力、所かまわずの失禁や弄便などの症状が現れると、ご家族ともども窮してしまいます。ご本人からすれば、周囲が投げかけてくる意味がわからず、役割を見失い、なじんだ環境が揺らいで混乱し、やむにやまれず不穏に至ります。認知症を患う、極北の姿です。
 
そこで、鎮静をもくろみ薬の調合ばかりにこだわったり、行動を制限したりと、“硬い”医療に終始するようでは、「認知症疾患医療センター」の名がすたります。患者様ごとに都度に“間”を合わせて呼応し、療養環境を整えます。改めて場になじみ、役割を取り戻していただけるよう腐心します。その際、認知症疾患ごとの病態の特性を同定し、むしろ、それを援用していきます。すると、おのずから不穏が後退していくものです。薬や行動制限は、補助に過ぎません。
 
患者様ごとに「なじみの関係」、「昔取った杵柄」を復興し、「その人らしさ」を浮き上がらせ、ひいては、認知症による心理・行動上の症状がおのずと緩和される――。そんな“柔らかい”医療、看護、介護、福祉を展開して参りたいと存じます。
 
お年を召して精神に不調を抱えることを余儀なくされた方、あるいはそのご家族の皆様に、「安心して生活を送れていらっしゃいますか。後ろ盾のない心もとなさを抱えていらっしゃいませんか」と口火を切りつつ、自信を持って皆様に寄り添わせていただけるようになれたら嬉しく存じます。
 
院長 鈴木 雄壱
精神保健指定医
精神保健判定医
日本精神神経学会精神科専門医・指導医・認知症診療医
日本医師会認定産業医
日本環境感染学会推薦インフェクションコントロールドクター
厚労省認知症サポート医
 
だいぶ前ではありますが、平成26年4月から1年間、読売新聞社YomiDrで、『元記者ドクター 心のカルテ』(https://yomidr.yomiuri.co.jp/archives/kokoronokarte/)を執筆、連載させていただきました。

 
 
 

想いを受け止めることのできる、豊かな人間性を大切に。
名誉院長 渡邉 直樹

 
「メンタルホスピタルかまくら山」は、鎌倉山の自然に向かって大きく開かれた病院です。
ここで自然に触れ、自然と一体になることを通じて、患者さまは“あるべき自分”という殻を脱ぎ捨てて、本来の自分自身を取り戻すことができるでしょう。私も時には白衣ではなくて作務衣で患者さまに接していますが、これも医師としての“あるべき姿”にとらわれないためであり、「外相整えば内相自ずから熟す」という森田療法の言葉の体現でもあります。
 
私が医師となったのは39歳と、遅いスタートでした。人間とは何かという想いから自分の心を知りたいと考え、精神科医となりましたが、今もその気持ちは深まるばかりです。
患者さまと接するたびに教えられることも多く、まだまだ勉強が足りないと考えています。そして、患者さまが生きる力を取り戻し、笑顔で社会復帰される姿を見るたびに、もっと学びたいという意欲が湧いてくるのです。患者さまに寄り添うためには、私たち医療人は豊かな人間性を磨かなくてはなりません。
「メンタルホスピタルかまくら山」ではスタッフ教育にも力を入れ、患者さま一人ひとりの想いを受け止めることのできる医療人の育成に取り組んでいます。そして、すべての患者さまの“その人らしさ”を受け止め、大切に支えていく、そんな医療人のそろった病院を目指してまいります。
 
名誉院長 渡邉 直樹
聖マリアンナ医科大学客員教授
精神保健指定医
日本精神神経学会精神科専門医•指導医
森田療法学会理事・専門医
内観医学会名誉会員

著書: 自殺は予防できる
論文: 自殺予防と運動